不正調査には必須の不正のトライアングルの概要を説明します。
私は監査部門を出発点として、M&A部門、再生部門、株価算定、不正調査部門と、
様々な部門を経験してきました。
当時はM&A、不正調査などはまだまだ馴染みがあるものではなく、何でも経験できたのです。
当時はまだそれぞれが専門化されていませんでしたので、そして人材も乏しかったものですから、
一人の人が色々な業務を実施することができました。
その点は、とてもラッキーだったと思っています。
その間、某省庁に出向のような形で異動することができたのは、
私にとってはとてもいい経験となりました。
さて、そのうちの不正調査ですが、これに限らず監査以外は公認会計士の資格は必要ありません。
もちろん、あった方が財務諸表を分析することができますので、有利であることは確かです。
でも、資格がなくても、きちんと財務分析ができれば問題はないのです。
不正調査を勉強していくと必ず、この不正のトライアングルにぶつかります。
私見ですが、この不正のトライアングルってとても優れモノだと思っています。
不正のトライアングル理論は、
不正の発生原因には、
①動機・プレッシャー
②機会
③姿勢・正当化
の3点の要因が存在する。
というものです。どれか欠けると不正は発生しません。
ですから、不正を予防するためにどれかを欠けるようにすればいいのです。
横領を考えてみましょう。
ギャンブルの失敗により多額のお金を必要とする人がいたとします。
①としては、これは満たしてしまいますね。お金を必要としているから、
会社の金を横領しようという動機は存在してしまいます。
②でも、この会社は現金・預金管理がしっかりとしていて、
記帳と現物管理の担当が分かれています。現物を管理していたとして、勝手にお金を抜きとったら、
帳簿とずれが生じてしまいます。内部牽制がきちんと働いているわけです。
横領する機会がないわけです。
③については、この人の給料はなかなか上がらず、安月給のままだったとしますと、
「会社が俺にちゃんと給料をよこさないから、少しぐらい横領したってかまわないんだ」
と正当化する余地はありますね。
結果として①と③は満たすけれども、②は満たしませんので、横領はできないというものです。
不正調査の第三者委員会のレポートを読んでみてください。
ほとんどこの3つに分類してレポートを書いていますし、
私も不正調査をやった時は、この3つの分類にそってひとつづつ調査をしていきました。
これに沿って調査をするととてもレポートが書きやすくなります。
他方、会社にとって大事なのは②なのです。
不正行為を行うような体制でいないこと、
内部統制を適切に構築して、不正ができないような組織とすること
が大事なのです。
もちろん、正当化できないように給料を上げるとか、残業を少なくするといったことも
必要ではありますが、幾分、個人の主観面が影響しますので、
まずは、客観的である②の適切な構築をするべきなのです。
最後に、不正調査をする人を啓発するための組織として日本公認不正検査士協会があります。
公認不正検査士という資格を認定しています。
私もこの試験に合格しましたが、不正調査をする人はほとんど保有していると思います。
2年ほど会員登録し、名刺にも「公認不正検査士」記載していましたが、
今は会員ではありませんので、名刺には記載していません。
ご興味がある方は下記のリンク先をご覧になってください。