課税の公平
相続税の計算はとても面倒くさいものとなっています。
なんでこんな面倒くさい計算となっているのか?その理由が分かれば理解も早いと思います。
相続税に限らず、税金一般において、求められているのは
課税の公平
です。
法人税や所得税で減価償却資産について、償却方法や法定耐用年数が厳密に決められているのも、
課税を公平にするためです。利益が多く出た時に償却年数を短くすることができたら、
所得調整となってしまい、課税の公平が保たれません。
相続税も同じです。
もし、遺言、養子等で相続する人が多かったらどうなるでしょうか。
そしてそれが節税のためだけだとしたら。
超過累進税率である相続税は、各人の相続分が少なくなればなるほど、全体の税金は少なくなります。
それを許さないためにも、
相続税はいったん法定相続分で相続したとして、相続税の総額を求めます。
こうすれば、どのように相続しようとも相続税の総額は変わりません。
養子をいっぱい作ったとしても、相続税の総額では法定相続分と変わりません。
相続税の計算体系
では、課税の公平ということを念頭に置いて、相続税の計算体系を見てみましょう。
STEP1 各相続人の課税価格の計算
STEP2 相続税の総額の計算
STEP3 各人の納付税額の計算
このような体系になります。
各相続人の相続した課税価格に直接税率を乗じるのではなくて、一旦それを合計して、
法定相続人の数に応じた法定相続分で按分して、それぞれの税額を求め、それを合算して、
相続税の総額を求めます。
こうすれば、どのように遺産を分割しようと、課税遺産の総額が同じであれば、
相続税の総額は同じとなり、課税の公平は保たれます。
STEP1 各相続人の課税価格の計算
STEP1では、各相続人・受遺者ごとに被相続人から相続又は遺贈により取得した財産を集計し、
そこから非課税財産、債務を控除して課税価格を計算します。
計算式は
本来の財産+みなし相続財産-非課税財産-債務控除+生前贈与加算
です。
本来の財産
本来の財産とは、被相続人が相続開始時点で所有していた財産で、
金銭に換算できる経済的に価値のある財産です。
みなし相続財産
被相続人が所有していた財産ではありませんが、被相続人の死亡を原因として相続人が受け取った財産を、
みなし相続財産といいます。
例えば、あなたが死亡保険金を受け取ったとしましょう。
この保険金はあなたのものです。被相続人のものではありません。
でも、被相続人の死亡を原因としてあなたが受け取ったのですから、
これを相続財産とみなしましょうというものです。「みなす」ですから、反論はできません。
生命保険金、退職金などがあります。
非課税財産
お墓などは非課税財産となります。
また、相続人が取得した生命保険金や退職金は次の計算式で求めた金額が非課税となります。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
この法定相続人には、相続を放棄した人も含まれます。
また、養子がいる場合には、
実子がいる場合 -養子は1人まで算入可
養子がいない場合-養子は2人まで算入可
これにより養子を増やすことによって相続税逃れを防止することができます。
なお、これらは生命保険金、退職金、それぞれから控除することができます。
総額ではありません。
私はFP3級の試験の時には、生命保険金と退職金の合計から、上記の式の算定結果を控除したのですが、
割切れずおかしいなと感じていたのですが、やはり間違いでした。
債務控除
借入金や葬式費用を控除することができます。
香典は非課税ですので、香典返しは控除できませんし、
お墓の購入未払金も、お墓が非課税ですので、当該未払金も控除できません。
生前贈与加算
相続開始前3年以内に、被相続人から贈与により財産を取得している場合に、
その贈与財産を相続財産に加算します。
孫などで相続しておらず、相続財産がない場合には、加算する必要はありません。
STEP2 相続税額の総額の計算
遺産に係る基礎控除額
各相続人の課税財産を一旦合計し、そこから基礎控除を差引きします。
遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
親子3人が相続すると、3000万円+600万円×3人=4,800万円となりますが、
一般的な家庭で、この額を保有している人は中々いません。
この結果相続税の申告割合が8~10%と言われている所以です。
財産の総額がこの金額以下である場合には、申告する必要はありません。
法定相続人の数に応じた法定相続分で按分
これらの財産を法定相続人で法定相続分で相続したと仮定して、一旦、相続税の総額を計算します。
これで一律に相続税額が決まります。
配偶者と実子2人と配偶者と実子1人、養子100人でも法定相続人の数は3人ですから、
相続税の総額は同じです。養子を増やして相続税を減額することはできません。
(実施がいる場合、養子は1人まで算入可)
相続人の法定相続分に税率を乗じて、各相続人の税額を算出し、それを合計して、
相続税の総額を算出します。
STEP3 各人の納付税額の計算
相続税額の2割加算
相続税の総額に、各人の実際に取得した財産の割合を乗じて、それぞれの算出税額を算出します。
この場合、配偶者及び1親等の血族以外は
算出税額に2割加算
がなされます。
税額控除
税額控除は、
贈与税額控除-生前贈与加算分で贈与税を納付している場合には贈与税額を相続税額から控除
配偶者の税額軽減-一定の計算による控除額。配偶者が相続した課税対象の遺産の額が1億6,000万円まで、
もしくは配偶者の法定相続分までであれば、相続税が課税されない制度です。
未成年者控除-10万円×18歳に達するまでの年数1億6千万円と法定相続分のいずれか小さい額
この他、障害者控除、相次相続控除、外国税額控除があります。