法人税のポイント

別表5(1)の構造を理解する 別表4との関係は?

別表4と5の関係がよく分からない方は多いのではないでしょうか。
何となくは理解できているが、細部になるとちょっと不安という方は意外といらっしゃいます。
私は、この税務の申告書一式を考え出した人は凄いなと思っていますが、
税務はとても不親切にできていますね。
だから、申告書を経営者が作成できず、税理士に依頼するということになっているのかな?
とも思っています。
最も、それで私たちはご飯が食べれるのでしょうが、身近なものには決してなりませんね。

まず、留保と社外流出を理解する

別表4に留保と社外流出があります。

留保項目とは、主に会計上の損益と税務上の損益の期間帰属のズレを修正するための調整

です。そして、この調整は発生と消滅に分けることができます。
減価償却の償却超過額は留保項目の発生であり、翌年、それが認容されると消滅になります。他方、

社外流出項目は、所得は増減しますが、それに対応する利益積立金額の増減がない項目

です。
交際費等の損金不算入額があります。

これらを修正仕訳という点から見てみますと、
例えば、留保項目である減価償却の償却超過額は、

有形固定資産 ×××  /減価償却費 ×××

という税務上の修正仕訳を考えることができます。
しかし、社外流出項目である交際費等の損金不算入額は、

?????? ×××  /交際費   ×××

です。損金としては認められませんが、金銭は流出しており、
利益積立金が増加するわけではなく、修正仕訳が考えられないのです。

別表5(1)の構成要素は3つ

おそらく別表5(1)を何となくわかったつもりになっていても、あやふやである理由は、
この別表5(1)の構成要素が3つあることにあると思います。
異なる性質のものが同じ表に混在していることが、不理解となってしまう元凶だと思います。
その3つとは、

  • 会計上の利益剰余金
  • 別表4留保項目
  • 未払法人税等

です。

会計上の利益剰余金

利益準備金、別途積立金、繰越損益金など、株主資本等変動計算書から転記するものです。
まずは、これで会計と税務の比較のスタートに立ちました。

別表4留保項目

別表4において留保項目とされたものを転記します。
減価償却の償却超過額、売上計上漏れ、貸倒損失否認、棚卸資産評価損否認などがあります。
会計と税務の損益の期間帰属のズレでありますから、翌期以降解消される予定です。

また、納税充当金は税務上損金と認められませんので、加算調整されます。

未払法人税等

会計上の利益剰余金に対して、納税充当金を加算調整して税務上の利益積立金を計上します。
そして、その後に申告書に基づいて計算された

実額である未納法人税等、未納道府県民税、未納市町村民税を控除して税務上の利益積立金を計算

します。

中小企業では、実額に基づいて納税充当金を計算しますので、
同額を加算して、減算するということになります。
何やってんだ!!と思わないでください。
大企業では見積りが普通で実額と一致しない方が多いと思われます。
少なくとも、私が監査した中で一致した会社は一つもありません。

ポイント

申告書に基づいて計算された実額を控除

ということです。

納税充当金はたとえ実額であっても一旦加算し、実額を未納法人等として控除するのです。

そして、もう一点、大事な点を一つ。
事業税は申告したときに債務が確定するため、翌期の申告時に利益積立金が減少します。
したがって、

別表5(1)の未納法人税等には事業税はありません。
別表5(2)の前期の確定分は、期首現在未納税額に記載するのではなく、当期発生税額に記載

(事業税以外は前期確定分は期首現在未納税額に記載)

することになります。

税務調整額がなく、確定申告額と同額の納税充当金を会計上している場合であっても、
税務と会計では確定事業税分だけ、税務上の利益積立金の方が多くなります。


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